今月中旬、シンガポールで開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議では、 鳩山由紀夫首相の一挙手一投足に注目が集まったといっても過言ではない。2回行った 講演の模様はテレビでも詳しく紹介され、建国以来の一党支配が続くシンガポールは、 政権が代わると何が起きるのかを見極めようとしているようにさえみえる。 そんななか、地元紙ストレーツ・タイムズ(23日付)は「鳩山テフロン首相」との見出しで 鳩山政権の“謎”を取り上げていた。鍋などに施すテフロン加工にたとえ、 「何があっても傷つかない」といった意味だ。 沖縄の米軍普天間飛行場の移設問題ではあいまいな答えを繰り返し、政治献金問題でも 「恵まれた家庭に育ったものだから」と言い放ちながら、支持率が5割を超える。 記事では「(同様に)裕福な家に生まれた麻生太郎前首相が同じことを言ったら、 政治的に葬られただろう」という安倍晋三元首相のコメントを載せ、 失言も痛手とならない鳩山首相に驚いているようだ。 確かにシンガポールでの講演を聴いても、首相の発言は妙な丁寧語や謙譲表現は 目立つが意味は不明瞭(めいりょう)だ。かつて「言語明瞭、意味不明瞭」といわれた 竹下登元首相の話は時々、禅問答のように思えたが、 後で意味の深さに気づかされることが多かった。 鳩山首相の発言も、実は深い考えに基づいており、 いずれ真意がわかるときが来ると期待しているのだが。(宮野弘之) 産経新聞
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