公立高校の入学試験で、学力検査がない推薦型の選考方法を見直す動きが広がっている。 和歌山県と静岡県がすでに一般入試に一本化したほか、埼玉など3県が来春入学の10年度 入試から、千葉など3県が13年度までに、すべての受験生が学力検査を受ける方式に改める。 学力検査なしに入学できる高校の増加が、中学生の「学力低下」の一因という指摘が背景にある。 学力検査がない入試には中学校長が推薦する「推薦入試」のほか、「自己推薦」や「特色選抜」など と呼ばれる試験があり、調査書や面接、小論文などで選考する場合が多い。 毎日新聞が全国の都道府県教育委員会に確認したところ、大阪府は以前から推薦入試がなかった。 和歌山県は07年度、静岡県は08年度から学力検査を課すようになっており、残る44都道府県で 学力検査なしの推薦入試が行われていた。 このうち青森、埼玉、高知の3県はこれまで一般入試の前に行っていた、学力検査のない入試を 10年度から廃止。一般入試後に行う後期試験でも3教科の学力検査を課す。また、千葉県と徳島県 は11年度から、前後2回ある試験の両方で5教科の学力検査を行うことにした。 推薦入試は80年ごろから農業や工業などの専門科で始まり、90年代には普通科にも拡大。その後、 自己推薦や特色選抜などに切り替える教委が相次いだため、学力検査を受けずに入学する生徒が 一気に増えた。 今春の入学者の4割が自己推薦組で、学校によっては8割に上る埼玉県教委は「『学力検査がないため 学習習慣が定着しない』という声がある」と説明。79年度の推薦入試導入以来、約30年ぶりに全受験生 が学力検査を受ける。高校側は「高校入学のレベルに達していない生徒が多すぎる。中学時代にもう少し 勉強するようになるのでは」(県立高校校長)と期待する。 10月22日の東京都教委では「推薦の募集人数が多すぎる」という批判の声が上がり、募集枠が決まらない 異例の事態となった。翌週の再協議で当初案通りとなったが、11年度以降の推薦入試のあり方について 今後検討することが決まった。また、栃木県教委が近く、推薦廃止も含めた入試改革の検討を行う有識者 会議を発足させるなど、見直し論議は今後も広がりそうだ。 高校の入試制度に詳しい聖学院大学の小川洋教授(教育学)は「私立高校の人気が高い地域ほど、早めに 生徒を確保しようと推薦による合格者を増やしてきたが、今になって枠を拡大しすぎたことに気付いたのでは」 と指摘している。 ソース
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